結婚や離婚にともなう姓の変更により、どれだけの時間と労力と信用を失うのか想像できない人たちに伝えたい。
もはや明治時代から続く日本の結婚制度は今の時代にあっていないのです。
1日も早く、選択的夫婦別姓の制度が導入されるべきです。
今回は、元夫と再婚をした経験から3回姓が変わり身をもってその大変さを体験したわたしが、姓の変更に伴って女性と子供が負うリスクについてお伝えします。
この記事であなたに伝えたいこと
事実婚という選択をする夫婦が世界の主流
日本の結婚制度(戸籍制度)は戦前の家制度の名残から、家と家の結びつきを重んじ、ほとんどの女性が男性の家に嫁いで姓を変えます。
夫は「ご主人様」と言われて殿様ヅラをしている家庭が多く見られますが、パートナーは対等であるはずなので違和感ありませんか?
戸籍というのは時代によって制度や名称に多少の違いはあっても、基本的には税金の徴収や徴兵とあわせて考えられてきたものです。
つまり、政府にとって、国民を管理するのに都合の良い制度なわけ。
国民目線でいうならば、夫婦同姓の戸籍制度で縛るのではなく、子供の扶養制度さえしっかり整えれば、特に戸籍にこだわる必要はありません。
世界的には、夫婦同姓にするか別姓にするかを選べる「選択的夫婦別姓」は、もはや当たり前。
フランスやドイツなど、ヨーロッパでは事実婚の社会的認知も進んでいるため、結婚や離婚の手続きが面倒なことから、籍を入れない人も多いです。
「結婚すべき」というプレッシャーはなく、結婚の形はあくまで当人の自由であり、同性婚なども含めてパートナーシップは多様であるということが社会に受け入れられているのです。
フィリピンも事実婚を選ぶ夫婦が多いです。キリスト教が国教であることから、一度結婚をすると離婚ができないことも理由のひとつですが。
事実上離婚をしていても法的な離婚ができないので、法律上の配偶者は元パートナーのままで新たなパートナーと事実婚をして家族を形成したり、はじめから事実婚を選択している友人、知人はたくさんいます。
法律的に結婚しているかどうかは関係なく、フィリピン人は事実上のパートナーのことを堂々と「ハズバンド(夫)/ワイフ(妻)」といいます。
令和のいま、ものすごいスピードでグローバル化が進んでいる世界で、当然鎖国をしていない日本にも様々な価値観がなだれ込んでいるのは明らかです。
選択的夫婦別姓が認められていない日本でも、「事実婚」を選択する夫婦が増えています。
事実婚が認められるなら事実離婚も認めるべきである理由を書いた記事はこちらです。
要するに、日本の結婚制度は今の時代に適合していないのです。
なぜ、夫婦のどちらか一方がリスクを背負って姓を変更しなければいけないのか
とにかくマジで面倒くさい日本の結婚制度にともなう姓(苗字)変更の手続き!
結婚や離婚により姓が変わると、自らの身分を証明する公的書類の氏名が変わります。まず、自動的に氏名が変わるのは戸籍謄(抄)本と住民票。
次に、これらの古い公的書類を元に取得した運転免許証やパスポートなどの身分証明書を変更します。
子供がいる場合は、家庭裁判所に子供の姓の変更のための申請をしなくてはいけないですし、
それぞれの手続に時間がかかるため、親子なのに姓が異なる期間が発生して国外への出入国の際に問題が生じます。
古い身分証明書を元に作成した銀行口座やクレジットカード、投資信託なども名義を変更しなければいけません。
さらに、旧姓で取得した各種資格や弁護士・行政書士などの士業、医師、看護師、保健師、介護福祉士、保育士などの免許も変更手続きが必要です。
姓の変更がされてから30日以内に登録変更申請を行るルールにしているものが多く、1ヶ月を過ぎてから医師免許の氏名変更申請をして反省文の提出を求められた人も。
すでに発表された論文などはもはや氏名を変更することが難しく、別人とみなされてしまいキャリア形成に支障が出る点でも問題だと言われています。
また、長年親しんだ名前が変わり、新しい苗字で呼ばれることで「自分がいなくなったような感覚」に陥る人もいるのです。
これらの負担を負うのは、ほぼ妻である女性。
毎年、約60万組が結婚する日本では、男性側の姓にそろえるケースが96%を占めています。
そもそも、なぜ、結婚をするにあたり夫婦のどちらか一方がこれらのリスクを背負って姓を変更しなければいけないのでしょうか?
【離婚にともなう手続き】親子で姓が異なる期間は海外に行けない!?
結婚よりも、離婚のほうが100倍エネルギーが必要だとよく言いますが、まったくもって同意です。
友人、知人、職場の同僚への報告は個々の考え方次第だとしても、親族への報告やら配慮はもちろん、なんといっても諸々の手続きがとにかく大変!
離婚をする時に行った各種手続きは以下となります。
- 市役所の戸籍課に離婚届を提出する
- 運転免許証の氏名を変更する
- パスポートの氏名を変更する
- 銀行口座の氏名を変更する
- クレジットカードの氏名を変更する
- 家庭裁判所に子供の姓の変更を申請する
公的機関で手続きを行うためには、平日に休みをとって該当機関に足を運ばないといけないですし、それぞれの手続きのための必要書類もウザいくらいにたくさんあります。
離婚届を市役所の戸籍課に提出する
協議離婚、調停離婚、裁判離婚、どの方法で離婚することになったとしても、法律上の婚姻関係を解消するためには離婚届を提出する必要があります。
調停離婚や裁判離婚の場合には不要ですが、協議離婚の場合には20歳以上の2名の証人が必要です。
離婚届を提出する際、夫の戸籍から自分の戸籍を抜いた後の自らの姓を選びます。選択肢は以下の2つ。
- 結婚前の姓(旧姓)に戻る
結婚前の戸籍に戻る、もしくは新しい戸籍を作る、のどちらでも選択することができます。
ただし、子供を自分の戸籍に入れたい場合は、自分を筆頭者とする新しい戸籍をつくる必要があります。
- 結婚時の姓(夫の姓)を継続する
結婚時の姓を継続する場合は、離婚届とともに「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出します。
提出期限は、離婚から3ヵ月以内。この期間内であれば、継続して名乗りたい理由や、同じ姓である相手方の同意などを聞かれることはありません。
未成年者の子がいる場合、養育する親権者を決めてから子の氏名を記入します。どちらが親権者となるか決まっていない場合、離婚届は受理されないからです。
家庭裁判所に「子の氏の変更許可」という申し立てを行う
親権を持ったわたしが新しい戸籍をつくっても、自動的に子供も一緒に戸籍を移されることはありません。
離婚をして親権を獲得しても子供は元旦那の戸籍に残ったままとなり、子供の苗字は変わらないのです。
子供を自分の戸籍に移し、自分と同じ苗字にするためには、以下の手続きが必要となります。
- 自分を筆頭者として新しい戸籍を作る(苗字は旧姓でも結婚時の姓でもOK)
- 子供の住所地を管轄する家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立てをする
- 家庭裁判所で審査を受け変更許可を得ると「許可審判書」が交付される
- 上記の「許可審判書」と新しい戸籍に入るための「入籍届」を役所に提出
子の氏の変更許可の申し立てができるのは子供自身であり、15歳未満の子供は親権者である法定代理人が申し立てを行います。
家庭裁判所に「氏の変更の許可」という申し立てを行い、裁判所から変更の許可を取得。無事に子供の氏を変更することができたら、裁判所から審判書謄本が届きます。
この審判書謄本を持って、子供の本籍地、もしくは戸籍の筆頭者である自分の住所地の役所で子供の戸籍変更手続きを行います。戸籍の変更手続きは「入籍届」を出すことで完了です。
親子で異なる姓だとフィリピン入国を拒否をされる可能性がある
わたしはセブ母子移住後の一時帰国中に離婚届を提出したので、日本に滞在した2週間の間に上記すべての手続を終えることはできませんでした。
離婚届を提出してから戸籍謄本に情報が反映されるまで約1週間。
その後、新しい戸籍謄本を取得してから別の手続き(パスポートの変更、子の氏の変更許可申請など)をする流れとなり、申請してからまたそれぞれ時間がかかります。
わたしは旧姓に戻ったものの、子供2人の姓の変更はまだ手続きが完了していない状態でセブに戻る日を迎えたわけです。
そしたら、なんとフィリピン航空のチェックイン・カウンターで止められてしまい、まさかのフィリピン入国拒否!?という冷や汗をかく事態となりました。
15歳未満の子供がフィリピンに入国する際は、親権者もしくは事前のWEG申請で証人を得た者と同行しなくてはいけません。
実の親子でも苗字(姓)が異なる場合はWEG申請が必要となる可能性があります。
フィリピン大使館でのWEG申請方法について書いた記事はこちらです。
2013年当時のわたしはまだまだ知識が乏しく、それらを知らなかったので焦る焦る!
たまたま持っていた母子手帳で親子関係を証明して、何度も説明を重ね、わたしはなんとか無事にフィリピン入国をすることができましたが、
セブ親子留学を希望されていた韓国人の(姓が異なる)母子が実際にフィリピン入国拒否となったケースもあります。
姓を変更することで生じるリスクをまざまざと感じた体験です。
【再婚にともなう手続き】実子なのに養子縁組が必要!
そして、再婚をする時に行った手続きは以下となります。
- 市役所の戸籍課に結婚届を提出する
- 警察署で運転免許証の氏名を変更する
- パスポートの氏名を変更する
- 銀行口座の氏名を変更する
- クレジットカードの氏名を変更する
- 実子なのに養子縁組手続きをする
結婚届の提出やパスポート、銀行口座、クレジットカードの氏名変更手続きは離婚時とほぼ同じですが、
驚きだったのは、子供を実の父親である夫の戸籍に戻すために「養子縁組手続き」が必要だったこと!
親権を持ったわたしが元夫と再婚をしても、自動的に子供も一緒に元の戸籍に戻ることはなく、子供はわたしが離婚時につくった戸籍に残ったままとなります。
子供2人を夫の戸籍に入れるためには、たとえ実子であっても、養子として迎え入れなければいけなかったのです。
結婚や離婚を経験している人はわりと多いですが、養子縁組の経験者はまだ少ないと思うので養子縁組手続きについて紹介します。
母親の戸籍から父親の戸籍に移すためには養子縁組をしなければいけない
養子縁組届には父母の氏名や住所、本籍などの必要事項を記入し、入籍届と同様、こちらも2人の証人に記入と押印をしてもらう必要があります。
「養親、もしくは養子の本籍地」または「届出人の住所地」にある、役所の戸籍課に提出します。
養子縁組を届け出るためには、以下の3〜4点が必要です。
- 養子縁組届書
- 届出人の印鑑
- 届出人の身分証明書(免許証、パスポートなど)
- 養子・養親の戸籍謄本(提出先が本籍地の役所でない場合)
実の親子にもかかわらず、母親の戸籍から父親の戸籍に移すためには養子縁組をしなければいけないというのは、なんだかショックです。
そして結局、二度目の入籍手続き・養子縁組手続きを済ませた後、再度一緒に住む約束をしていた夫は急に音信不通になってしまいました。
家族として信頼関係を築く努力を放棄した夫について書いた記事はこちらです。
1日も早く、選択的夫婦別姓の制度を導入するべき
なぜ、結婚をするにあたって夫婦のどちらか一方がこれらのコストとリスクを背負って姓を変更しなければいけないのでしょうか。
選択的夫婦別姓制度に賛成する人々は、別に夫婦同姓制度を消滅させたいと叫んでいるわけではありません。
当人たちの考え方や事情により、どちらでも選択ができる社会を目指しているのです。
ただ選択肢が増えるというだけなのに、「伝統がー」とか「家族の一体感がー」と言って反対している人たちに言いたい。
いや、お前は夫婦同姓を選べばええやん。
江戸時代以前は結婚に対する考え方はもっと自由だったわけだし、夫婦別姓が嫌なら夫婦同姓を選べばいいだけの話です。
選択できないということが問題なのですから。
もはや明治時代から続く結婚制度そのものが今の時代にあっていないのです。
1日も早く、選択的夫婦別姓の制度が導入されるべきです。
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わたしの離婚にまつわる体験談、初めての子育てに挫折して死のうとした経験について書いた記事はこちらです。もしよかったら読んでください。